
第一章 須加之屁の捕縛 (3)
スカラーの訪問を、謀略だと疑う従者たちに対して、須加之屁は、
「なあに、何があろうとも、儂(わし)にゃあ、生涯、九層薙の剣(くそなぎのつるぎ)という、強い味方があるやんか!」
と言い放ったのだった。
いささか脱線するが、須加之屁命ご自慢の「九層薙剣」の謂われについて記しておこう。
九層薙ぎの剣は、
「決して折れず毀れず、
千の松明を集めた様な輝きを放ち、
あらゆるものを両断し、
この剣を携えて戦う者からは一滴の血も流れず、
重傷を負うこともない魔剣」
と信じられ、須加之屁は、眠る時でさえ、この剣を肌身離さず携えていた。
丹波国山田(たんばのくにやまだ)に住む帰化人で、刀剣作りに秀でた、於呂嘉門(おろ・かもん)の作とされる。
「九層薙」という名は、試し切りの際、九層に重ねた石板を一刀両断にしたことに由来する。
後に「九層」が同音の「糞」と混同され、「糞」は「臭い」ことから、「臭薙剣(くさなぎのつるぎ)」と呼ばれるようになり、名刀が「臭」ではあまりと言えばあまりなので、「臭」と同音の「草」が用いられるようになった。
なお、山田に住む於呂氏、即ち、山田の於呂氏(やまだのおろし)の作であることが、口から口へと伝わるうちに、伝言ゲームの常として変な風に変わっていき、いつしか
「やまたのおろち」なる大蛇の尻尾から見つかった
なんてトンデモ話に発展していった。
動物の体から刀剣が出るわけないわな。
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